- 発語がない。
それだけで、毎日の育児は、
- 混乱や不安
- もどかしさ
- いらだち
- 気分の落ち込み
などと隣り合わせになります。
私の娘は、自閉症と知的障害があり、現在も発語はほとんどありません。
何を考えているのか、何を求めているのかがわからず、「どう関わればいいのか」「このままで大丈夫なのか」と悩み続けてきました。
この記事では、発語がない娘との意思疎通の方法や実際に試した工夫、関わる上でのポイントなどを実体験ベースで正直にまとめています。
劇的な方法や魔法のような解決策はありません。
それでも、「意思疎通ができている」と感じられる瞬間は、確かにあります。
同じように悩んでいる親御さんが、「一人じゃない」「これでいいのかもしれない」と少しでも思えるきっかけになれば嬉しいです。
発語がない自閉症の娘の状態と、意思疎通の難しさ
私の娘は、自閉症(ASD)と知的障害があり、2歳10か月のときに診断を受けました。
3歳7ヶ月の現在も発語はほとんどなく、話せる言葉は「アンパンマン」「ばいきんまん」の2つだけです。
発語はないけれど、まったく理解していないわけではない
言葉でのやり取りはできませんが、行動や動作で反応してくれる場面は見られます。
たとえば、
- 親が「ちょうだいは?」「開けては?」と声をかけると、手を叩いて意思を示す
- 少し離れた場所で両手を広げて待っていると、走ってきてハグをしてくれる
- 着替えのときに「オムツね」と声をかけると、足を上げて協力してくれる
こうした反応を見るたびに、
「言葉は出なくても、意思疎通が図れる場面は確実にある」
と感じることがあります。
意思疎通は「環境」が大きく影響している
一方で、意思疎通が難しくなる場面があります。
- 慣れていない動作
- 初めての場所や雰囲気
- いつもと違う動きや流れ
こうした状況では、パニックや癇癪が起きやすい傾向があります。
意思疎通に「習慣化」は必要不可欠
例えば、娘は次のようなことができます。
- 食べるものを実際に見せると用意された椅子に座る
- 玄関では「靴を履く・脱ぐ場所」と理解して、一度座る
- 手洗い後にペーパータオルを渡すと自ら手に取り拭く
など、習慣化された行動のもとでは、意思疎通のしやすさがあります。
発語がないことで親が困る・つらい場面
意思疎通で困るのは「気持ちが読めない」とき

発語がないことでかなり困るのは、娘の気持ちや要求がはっきりとわかってあげられない時です。
泣いている理由も、怒っている理由もわからない。
「何をしてほしいの?」
「どうすれば落ち着くの?」
そう問いかけながらも答えは返ってこず、親としてどう対応すればいいのかわからない時が、今でも何度もあります。
この「わからなさ」こそが、発語がない子どもとの意思疎通で、私が苦しかった部分です。
発語がないことで感じるつらさの一つに、周囲との温度差や自分の気持ちの置き場がないことです。
周囲の「悪気のない言葉」に傷つくこと
家族や周囲の人に、娘の発語がほとんどないことを話すと、こんな言葉をかけられることがよくあります。
「まだ3歳でしょ!?これからだよ。大丈夫だよ」
「きっとそのうち話すようになるよ」
「〇〇ちゃんは5歳になるまで言葉が出なかったよ」
励まそうとしてくれているのは分かります。
でも、その言葉を聞くたびに、誰にも今のつらさが分かってもらえていないような気持ちになります。
自分を責めてしまう気持ち
私自身も娘と同じように発達障害があります。
そのこともあり、
そんなふうに、必要以上に考えてしまうことがあります。
発語がない理由は一つではないと頭では分かっていても、答えのない不安の中で、「原因」を自分に向けてしまうことが、何度もあります。
何が正解かわからないまま向き合う苦しさ
発語を促すためには何をすることが正解なのか、分からず迷うことは今でもあります。
- もっと声をかけたほうがいいのか
- 無理やりせずに、もっと見守ったほうがいいのか
- 療育をもっと増やしたほうがいいのか
何を選んでも、「これで合っているのかな」という不安がついてきます。
発語がない子どもとの関わりにおいて、「これをやるのが正解」と目に見える答えを探すことの難しさを痛感しています。
発語がない娘と意思疎通のために試したこと
発語がない娘と、どうすれば気持ちが通じるのか。
これまで、いろいろな方法を試してみました。
ネットや本でよく勧められている方法を、「これで少しでも伝わるなら」という思いで取り入れてきました。
家庭で実際に試した意思疎通の方法
家庭で試した主な方法は、次のようなものです。
- ハンドサイン:要求があるときに、手を叩く・ジェスチャーで示す
- 絵カード(写真カード):食べ物や場所の実際の写真を使って、選択肢を見せる
- 実況中継:娘の行動や気持ちを、親が言葉にして代弁すること
どれも「自閉症の子には効果的」とよく紹介されている方法で、療育の現場でも使われているのを見てきました。
実際に試してみてどうなったか
ハンドサイン

上の写真は娘が食事をする際に、親が「いただきますは?」と声をかけると手を合わせてくれる様子です。
また、似たようなもので、「これ欲しい」「これやって」などを表現するとき、娘は「手をたたく」というハンドサインで意思表示してくれます。
2歳〜2歳半頃から、この2種類がハンドサインとして定着しています。
絵カード(写真カード)

食事やお菓子、トイレ、お風呂、保育園、療育先、着替え、歯ブラシ、おむつ交換など、実際の写真を印刷し、ボードに貼り付け、絵カード代わりに使用してみました。
その場面になると、該当する写真を娘に見せる、というようなことを試していますが、それがどのように娘に影響しているかは今のところよくわかりません。
興味をもってくれるよう、リビングのおもちゃと一緒に写真カードは置いてありますが、娘はじっと眺めたり、ボードに並べたりするだけに留まっています。
実況中継
例えば、娘が見ているものや行っている動作を「これ◯◯だね」「〇〇してるの」などと親が声に出したり、笑ったり、怒ったりしていれば「うれしい?」「怒っているの?」などのように感情を表すワードを伝えたりするなど、なるべくシンプルで短いワードを実況中継するようにしています。
そうするとごくごくたまにですが、親がいったワードを娘が何となく真似して言うような場面がありますが、正直どこまで親の言った言葉を理解しているかは分かりません。
意思疎通の関わりで大切なこと
意思疎通の試みがうまくいかないときの考え方
いろいろと試しては見たものの、うまくいないことも多いです。
そういうとき、
と、考えてしまうことがあります。
ですが、意思疎通の方法は、子どもの特性・タイミング・環境によって合う合わない時もあります。
「今はこの方法がただ合わなかっただけかもしれない」
「まだ娘の準備が整っていなかっただけかもしれない」
前を向くために、そのように考えることを意識したりもします。
支援先の意思疎通の試みを参考にする
意思疎通の関わりでよくやってしまいがちなことに、
「我が子のために、もっと頑張らなきゃ」
と自分を追い込んでしまうことです。
私も同じような精神状態になっていた時があります。
そんな関わり方を変えようと思った転機は、保育園や療育先での関わりを見たことです。
声のかけ方、待ち方、無理にやらせない姿勢。
「できるようにさせる」よりも、「安心できる関わり」を大切にしているように感じました。
それを家でも取り入れてみようと思いました。
「やらせよう」としないこと
今までの私は、
- 返事を期待して、何度も声をかける
- 真似してくれるまで、繰り返し見本を見せる
そんな関わりをしていました。
でも、それが娘にとっては負担になっていたのかもしれないと感じるようになりました。
そこで、
- 反応がなければ、無理に続けない
- 今は難しそうなら、一度やめる
「うまくいかなくてもいい」と思うようにしました。
親だけで100%抱え込まない
もう一つ、大きく変えたことがあります。
それは、「親がすべてを背負わなくていい」と考えるようになったことです。
常に100%の力で関わろうとすると、親の心と体が先に限界を迎えてしまいます。
私は、
- 家庭では50%
- 残りの50%は、保育園・療育・障害福祉サービス
に頼る、という考え方に切り替えました。
どうせ抱え込むなら、周りを巻き込む。そのほうが、娘にも、親にも、余裕が生まれると感じています。
娘の意思疎通の変化
意思疎通の関わりは今でも、思うようにいかないことの方が多いです。
それでも、「前よりも分かってきた・通じ合えてきた」と感じる瞬間は、少しずつ増えてきました。
行動や仕草で、要求を伝える幅が広がってきた

娘は、言葉で伝えられない分、行動や仕草で意思表示を伝えられる力が増えました。
たとえば、
- 親の手を引いて、行きたい場所へ連れていく
- 目的の物を持ってきて、こちらを見る
- 要求があるときに、力強く繰り返し手を叩く
以前よりも、「今、何をしてほしいのか」が分かる場面が増えてきました。
無理をしない関わりが、パニックや癇癪の減少に
以前は、親が娘に「やらせなきゃ」「伝えなきゃ」と思うあまり、娘のペースを置き去りにしていたように思います。
今は、
- やりたいことをなるべく好きなだけやらせる
- 無理に切り替えさせようとしない
もちろん危険や周りに迷惑がかからない範囲で行います。そうすると、不思議とその後のパニックや癇癪、不機嫌が落ち着くことがあります。
「今はこれが必要なんだな」
そう思えるようになったことで、私自身の気持ちも少し楽になりました。
言葉がなくても、気持ちが伝わる瞬間がある
発語はなくても、
- ハグをすると、落ち着く
- 何もしなくても、そばにいるだけで安心する
- 娘と笑顔のキャッチボールができる
そんな場面があります。
言葉がなくても、気持ちはちゃんと行き来していると感じる瞬間があります。
意思疎通の変化は一日してならず
正直に言うと、「これをやったから一気に変わった」というような出来事はありません。
意思疎通が少し楽になったと感じるまでには、半年〜1年ほどかかりました。
少しずつ積み重なった変化
最初は、「本当に変わっているのかな?」と分からないくらいの変化でした。
でも振り返ると、
- 娘の行動パターンが、少し読めるようになった
- パニックや癇癪の理由を推測できる場面が増えた
- 親の対応や考え方を少しずつ変えられるようになった
そんな小さな積み重ねがありました。
意思疎通がうまくいきやすい時間帯・場面
意思疎通が比較的うまくいくのは、
- 睡眠がしっかり取れている日
- 機嫌が安定している時間帯
- 娘が安心できる人や環境にいるとき
だと感じています。
逆に、疲れているときや、慣れない環境では、どんなに工夫しても難しいことが多いです。
「できた・できない」を日単位で見ないようにした
以前は、「今日はできた」「今日はダメだった」と、一日ごとに一喜一憂していました。
でも今は、数ヶ月〜半年くらいの単位で見るようにしています。
そうすることで、「進んでいないようで、少しずつ進んでいる」と感じられるようになりました。
まとめ:今だから言えること|発語がない子を育てる親として

発語がほとんどないからこそ、悩みはつきません。
将来への不安は、常にあります。
でも、前には進んでいる
時間はかかるかもしれないけれど、ちゃんと成長している部分はあります。
発語が増えなくても、できるようになったことは、確実にあります。
「発語がない=何もわかっていない」ではなかった
以前の私は、「発語がない=理解していない」と、どこかで思っていました。
でも今は、
そう考えるようになりました。
視線、行動、仕草、距離感。
言葉以外にも、意思疎通の手段はたくさんあります。
発語がなくても、意思疎通は少しずつ育っていく
発語がないことで、うまくコミュニケーションが取れない時は、苦しくなります。
しかし、大切だと感じているのは、
- ひとつの方法にこだわりすぎないこと
- その子に合う形を、時間をかけて探すこと
- 親が抱え込みすぎないこと
焦らず共に進んでいきましょう。
同じように悩んでいる親御さんへ
もし今、
「全然通じていない気がする」
「何をやってもダメな気がする」
そう感じているなら、それはあなたの関わりが間違っているからではありません。
合う方法・合わないだけで、今はまだ見つかっていないだけかもしれません。
あなたとお子さんのペースで、少しずつ探していけばいいと思います。
私も悩みながら、試行錯誤しながら娘の成長を見守っていきたいと思います。
我が家で試してきた発達支援・療育グッズ
意思疎通の方法と同じように、発達支援や療育グッズにも、合う・合わないがあります。
我が家でも、試してみて「よかったもの」「合わなかったもの」いろいろありました。
別の記事で、発語がない自閉症の子ども向けに、実際に使ってみた発達支援・療育グッズをまとめています。
もし、「何から試せばいいか分からない」「家でできることを探している」という方がいれば、参考になれば嬉しいです。


